Scarab beetle

2004年8月24日 日常
いきなりキミは現れた。

それは通勤途中のこと。
ラッシュが過ぎた後の ほんの少しまったりとした車内にて。
いつもの見慣れた景色の中。
そわそわと車窓から外の景色を眺めては
左腕に嵌めた時計に何度も目をやる、背広姿の男性がひとり。

その彼の左肩甲骨あたりに キミはいた。

まるで、日をうけてきらきらと輝くエメラルドのように
ただじっとそこに佇んで。
まるで宝物を見つけた子供のように、
その小さく光るエメラルドの宝石にそっと手を伸ばす。

それはあまりにも容易に、
宝石が本来あるべき場所へ帰るまでのほんの一瞬
私の手に落ちたのだった。

そしてキミは
また誰も手の届かない 宝石箱の中へ消えていく。

※背広姿の男性は、自分の背中についていたエメラルドを 喜んで私に差し出したのだった。

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